普段、本を読んでも泣くことがない。
唯一泣いたのが、桜木紫乃の『無垢の領域』だった。(釧路を舞台にした作品で(桜木紫乃の作品はほとんどが釧路を舞台にしているのだけれど)読んだ本を手元に置かない私が本棚に収めた作品。機会があればぜひ。)
そして泣いた作品2冊目になってしまったのが、今日読んだこの本。
『夫のちんぽが入らない』著:こだま
さすがに仕事関係の人に読んでもらってることが多いこのブログで、本のタイトルをこの記事の題名にするのはちょっと憚られる。
でもTwitterで話題になっていたときからとても気になっていて先月文庫化されたのを機に買った。
こだまさんという女性が書いた私小説。
夫婦、パートナーとのありかたを考えさせられる。「普通の夫婦」とはなにか。
心にぐさぐさと刺さるものが多くて、情緒不安定な時期に読んでしまったことをものすごく後悔した。でも私はこの本も本棚に収めることになる。
私は若い頃(たぶん中学生くらいの頃)から恋愛やパートナーという関係性において「二人のことは二人にしかわからない」と確信している。
子どもを持たない二人も、ものすごく歳の差がある二人も、夫が主夫をしている二人も、同性愛者の二人も、どれも否定する気は全くない。「二人のことは二人にしかわからない」し「二人がいいと思えばそれでいい」からだ。
(だから私は浮気問題とか離婚問題を取り上げて、無関係で無知なコメンテーターがあーだのこーだの詮索するワイドショーが大嫌い。)
この本に出てくる二人も、二人がいいのだからそれでいいのだ。
ただ周りの悪気のない言葉に傷つくけれど。
でもそれも「二人のことは二人にしかわからない」と思っていれば、多少痛みは和らぐのではないだろうか。
今も「普通」を振りかざすことをなるべくしないように気を付けているけれど、これからもそうでありたい、と思ったし、良い二人だな、とあたたかい気持ちになった一冊だった。
(文・吉田一美@本当に良い本でした。)
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