村上主義者

こちら、私の宝物。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(村上春樹)初版本。


高校3年のたしか2月ごろ、もうまもなく卒業するという時期に、国語の先生に言われました。「国文科に行くなら、ここに載ってる本は読んでおいたほうがいいよ」。

国語の教科書の巻末に、年代別の代表作が載っていたのですが、そのページをさしてそう言ったんです。


ふーん。図書館行くか。


登別の図書館に行きました。その時借りたのが『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(村上春樹)と、『限りなく透明に近いブルー』(村上龍)。


村上春樹の本は、中学校2年生くらいに読んだ『ノルウェイの森』が最初で、でも全く心惹かれることなく『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が私にとっての2作品目。


まーーーおもしろかった。


この本を読んでた日のことを今でも鮮明に覚えてるくらい、衝撃的な作品でした。ソファでごろごろしながら6時間ぶっ通しで読み切ったですよ。


それ以来、私は村上主義者になりました。(注:村上主義者とは、村上春樹の本のファンの人のこと。村上春樹自身がそう名付けました。)


この本を読んだ翌月か翌々月、本屋さんの文庫のコーナーで、村上春樹と札のついた棚にある作品の端から端までをレジに持っていったわけですが、そのときのワクワクもすごく覚えてます。後にも先にも一度にあんなに本を買ったのはこのときが最高。


短大2年の時かな、『ねじまき鳥クロニクル』が発表されて、でもそれを買うお金がなくて(たしか2500円前後だったような。)図書館で長い順番待ちをしたときに「好きな本を好きなときに好きなだけ買えるようになりたい」と強く思って、いまでもそれがお金を稼ぐ意味です。いい時計よりもいい車よりも本。


村上春樹の作品を、リアルタイムで読めること、同じ時代に生きていることをとても幸せだと思うし、新刊を読むことが生きる意味と言っても過言じゃない。新刊が出るってわかってる前に何かの拍子に死んだら、絶対あの世になんて旅立てない。


でも、人に村上春樹の本を勧めることはしません。なぜなら風呂敷ひろげっぱなしタイプの作品ばかりなので、「意味わかんないんですけどー」「で、結局どうなったの?」と思う人が多いだろうから。


大人になってから、どうしても図書館で借りたあの装丁の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を手元に置いておきたくて、数年前にこの初版本を入手しました。宝物です。


死ぬとき棺桶に入れてほしいのもこの本。これだけ持って旅立てれば、四十九日間の中陰の旅も、三途の川を渡るときも、ウキウキです。(そもそも中陰の旅の最中に本を読む余裕があるのか?って話ですが。)


(文・吉田一美)

好きなことで、生きていく | 吉田一美のブログ

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